9、②、ヤンニ・ノルネン [人形カタログ]
ノルネン王国には1人の息子と10人の娘がいました。
息子は王様になるべく、ていねいに育てられていましたが、娘の方は多すぎて、王様はいつも名前を間違えてばかり。
王妃は5人までの娘は大事に育てたのですが、そのあとはどうでもよくなっていました。
1人目から5人目まではいろいろ物を買ってもらえたり、1人ずつのお部屋を与えられたりしているのに、6人目から10人目までは同じ部屋。
名前も、1人目はベルベルセラト。2人目はメラミスワト。3人目、ヤッカランスイト。4人目、ジャストミラト。5人目、カルカスミワトと、占い師や祈祷師が呼ばれてつけられた名前でしたが、
6人目からは、ケンニ、ランニ、ヨンニ、ヤンニ、ミンニと、短くなっていました。
1人目から5人目までにはすばらしい家具やら持参金をつけて、どこかの富豪やら石油王やら国家元首のようなすごい所にお嫁に行かせたのですが、残りの娘はほったらかし状態でした。
サリムの目にとまった写真のヤンニは、9人目の娘でした。
同じ部屋で育った5人の中で6番目から9番目のケンニ、ランニ、ヨンニは仲が良く、何をするにも一緒に行動していました。
最後に生まれた10番目のミンニはご両親にも、1番目から5番目までの姉たちにとてもかわいがられていました。
9番目のヤンニはいつも忘れられる娘でした。
ヤンニにとって、「存在を忘れられること」は慣れこだったし、あたりまえのことだったので、ひとり遊びが得意な娘になりました。
さて、ヤンニは自分がお妃候補としてラリム王国に自分の写真が送られているなんて、ちっとも知りませんでした。
なので、ラリム王国からお迎えの者が来てラリム王国に行くことになったと聞いて、びっくりしました。
初めて人に選ばれたのです。
ヤンニの心にはそれだけでほんわりとピンク色のもやがかかったようになり、雲のように浮かんだようなふわふわな気持ちになりました。
そして、サリムに会うことが楽しみでなりませんでした。
さて、サリムとヤンニは会って、お互いに見たとたんに、
「この人だわ」
と思いました。
なにがそう思わせたのかわかりません。
長い間もんもんと続いていた時間の中で、ふっと沸き上がるように恋しい気持ちが生まれることがありますよね?
なんの意味もないものに意味が生まれることってありますよね?
二人はじっと見つめあって、ただそのままそばにいたいな、と思いました。
皆さんもご存知の通り、結婚なんてそんなに簡単にうまく行くものではありませんが…。
始まりとしてはまずまずの運びだと思いませんか??
この二人が末長く幸せでいられることを祈りたいです。
このお話はこれで終わりです。
コメント 0