秘密 [ショートショート]
おひなさまの
着物の中に
埋もれている秘密
お内裏様はそれを知りたい
だけど二人とも動けずにずっとじっと前を見ている
だから秘密は秘密のまま永遠に保たれる
箱の中でじっと待っている間も
秘密は秘密のまましまわれている
少しだけ息がつける3月にも
秘密は秘密のままだよ
だからけっきょく、秘密はそのままで
なにが秘密だったのかは解き明かされないし
だいいち
そこに秘密があることを知っている人も限られているから
膨大な時間が積もりその下に埋もれるだけだよ
ふむ
この場合、もうそろそろ秘密イコール化石になるんだろうな
ご報告
切り紙シリーズひとまず終了。
次回からは『人形カタログ』を掲載します。
よろしくお願いします。
着物の中に
埋もれている秘密
お内裏様はそれを知りたい
だけど二人とも動けずにずっとじっと前を見ている
だから秘密は秘密のまま永遠に保たれる
箱の中でじっと待っている間も
秘密は秘密のまましまわれている
少しだけ息がつける3月にも
秘密は秘密のままだよ
だからけっきょく、秘密はそのままで
なにが秘密だったのかは解き明かされないし
だいいち
そこに秘密があることを知っている人も限られているから
膨大な時間が積もりその下に埋もれるだけだよ
ふむ
この場合、もうそろそろ秘密イコール化石になるんだろうな
ご報告
切り紙シリーズひとまず終了。
次回からは『人形カタログ』を掲載します。
よろしくお願いします。
鈍 [ショートショート]
かーんと抜けている天井
膨張するだけ膨張して
膨張しきって広がり続ける
ふと見ると車は足先にあって
渋滞だったらしくて
じりじりと動いていたけど
それはかゆみ程度にしか感じなくなっていた
このまま鈍り続けよう
何も感じず
何も気がつかないまま
身体は無限と同じ大きさになって
その分心も広がり続ければいい
どんな爆弾も
どんな悲劇も
もう遠くでさえずる鳥の声と区別がつかないし
どんなに血を流していても
どんなに涙をながしていても
空を割って流れるような滝の中に隠れてしまうし
どろどろと渦巻く底なし沼のそこに行きついてしまう
平和とはどういう言葉だったのか
眠りの中に見え隠れする幸福と違っていたのか
さてどうだったのか
それはどういう意味だったのか
もう、何も気にならない
膨張するだけ膨張して
膨張しきって広がり続ける
ふと見ると車は足先にあって
渋滞だったらしくて
じりじりと動いていたけど
それはかゆみ程度にしか感じなくなっていた
このまま鈍り続けよう
何も感じず
何も気がつかないまま
身体は無限と同じ大きさになって
その分心も広がり続ければいい
どんな爆弾も
どんな悲劇も
もう遠くでさえずる鳥の声と区別がつかないし
どんなに血を流していても
どんなに涙をながしていても
空を割って流れるような滝の中に隠れてしまうし
どろどろと渦巻く底なし沼のそこに行きついてしまう
平和とはどういう言葉だったのか
眠りの中に見え隠れする幸福と違っていたのか
さてどうだったのか
それはどういう意味だったのか
もう、何も気にならない
怪人 [ショートショート]
小動物 [ショートショート]
小動物の衝動は
ちょうど小さい時計のカチカチいう音のように
ねじ巻きの間だけ起こっているのです
小動物はきょときょとと
ばくぜんと目を泳がせ
決して目的の物を見つめたりはしないのです
常ににおいをかぎわけ
いつでも逃げられるようにびくびくと
焦点をずらして当たりの気配をまとっています
動けるときには
常に口を動かして
食べられるものを食べられるときに
食べ続けられるだけ食べているのです
ちょっと考える静止の瞬間
世界の動きも止まってしまうのです
こそこそかさかさ逃げていく
その姿を追わないで下さい
目をそらし
背景の一部になりすまし
いないふりをしていてください
残りの切り紙が3枚になりました。
あと3つ詩を書きます。
実はたくさん書いてあるのですが
だいぶ保留にしました。
最後のひとつは決めたけど
あとひとつは作ります。
報告終わり。
ちょうど小さい時計のカチカチいう音のように
ねじ巻きの間だけ起こっているのです
小動物はきょときょとと
ばくぜんと目を泳がせ
決して目的の物を見つめたりはしないのです
常ににおいをかぎわけ
いつでも逃げられるようにびくびくと
焦点をずらして当たりの気配をまとっています
動けるときには
常に口を動かして
食べられるものを食べられるときに
食べ続けられるだけ食べているのです
ちょっと考える静止の瞬間
世界の動きも止まってしまうのです
こそこそかさかさ逃げていく
その姿を追わないで下さい
目をそらし
背景の一部になりすまし
いないふりをしていてください
残りの切り紙が3枚になりました。
あと3つ詩を書きます。
実はたくさん書いてあるのですが
だいぶ保留にしました。
最後のひとつは決めたけど
あとひとつは作ります。
報告終わり。
後悔 [ショートショート]
新年 [ショートショート]
年が明ける
何かをめくるように始まればわかりやすいのに
年の継ぎ目は
気づかぬうちに通り過ぎた
穏やか
ただただ
今は穏やか
ただただ
まだ、ただただ時が過ぎるばかり
また新しい年は始まり
いくら印をつけても
そこは一瞬で通り過ぎるよ
いくつもつけた印ももうどこだかわからないよ
とにかくなんとか留めようと
何億もの人びとが試みたこと
留める術がないことはわかっているけれど
ただただ
今日は留まってくださいよ
一日というその日のうちに息をつかせてくださいよ
なんなのかな?
たしかにだれもが言うのだから
その日はあったのだとは思うけれど
どこかに穴が開いているのかな?
その穴に向かって収束していくように見え
その穴がなければ何も動かないような気もする
何かをめくるように始まればわかりやすいのに
年の継ぎ目は
気づかぬうちに通り過ぎた
穏やか
ただただ
今は穏やか
ただただ
まだ、ただただ時が過ぎるばかり
また新しい年は始まり
いくら印をつけても
そこは一瞬で通り過ぎるよ
いくつもつけた印ももうどこだかわからないよ
とにかくなんとか留めようと
何億もの人びとが試みたこと
留める術がないことはわかっているけれど
ただただ
今日は留まってくださいよ
一日というその日のうちに息をつかせてくださいよ
なんなのかな?
たしかにだれもが言うのだから
その日はあったのだとは思うけれど
どこかに穴が開いているのかな?
その穴に向かって収束していくように見え
その穴がなければ何も動かないような気もする
わな [ショートショート]
悲鳴 [ショートショート]
言葉の切れ端を踏んづけたら
言葉が悲鳴を上げ
すぱ~~~~んと夜空に飛び散り
一瞬、真昼のような光
空を覆った光のつぶ
それは分散された言葉のつぶ
意味から解放され
思い思いの場所に燃え尽き吸収される
あとに残ったのはただの空
どこに光は消えたのか
その痕跡を探すことは難しい
今、目に焼き付いた饗宴を
せめて記憶にだけは残しておこうか
追伸:
掲載したショートショートの文書ファイルは
『済』というフォルダに移しているつもりなのですが
移すのを忘れているものもあって…。
先日掲載した『クッキー』というショートショートは
以前にも掲載していました。
最後の数行を直したらしくて
ちょっと違っていますが、お許しください。
言葉が悲鳴を上げ
すぱ~~~~んと夜空に飛び散り
一瞬、真昼のような光
空を覆った光のつぶ
それは分散された言葉のつぶ
意味から解放され
思い思いの場所に燃え尽き吸収される
あとに残ったのはただの空
どこに光は消えたのか
その痕跡を探すことは難しい
今、目に焼き付いた饗宴を
せめて記憶にだけは残しておこうか
追伸:
掲載したショートショートの文書ファイルは
『済』というフォルダに移しているつもりなのですが
移すのを忘れているものもあって…。
先日掲載した『クッキー』というショートショートは
以前にも掲載していました。
最後の数行を直したらしくて
ちょっと違っていますが、お許しください。
仮どめ [ショートショート]
安らぎ [ショートショート]
まったくふしぎなことですが
なんだか安らぎがあるのです
それはひょろひょろと流れる春の小川の
ほとりを散歩するような安らぎです
または広大な新緑の原に寝転ぶような安らぎです
もしかすると
深海魚のように海底でじっと動かないような安らぎかもしれませんし
まてよ?
ナマケモノが木の上でくた~っと力を抜いているような
安らぎかもしれません
うむ。
回転寿司で自分の好きなネタが回ってくるような
自転車を引っ張って雨の中を歩くような
長靴で浅い水たまりをひとつずつ踏み歩くような
雲の上で雲の中に埋もれてしまうような
三日月の幅があまりに狭いことに感嘆するような
ブラインドの隙間からこぼれ入る朝日のような
とにかくそんな安らぎです
光の粒が見えるのです
それがなによりの証拠です
なんだか安らぎがあるのです
それはひょろひょろと流れる春の小川の
ほとりを散歩するような安らぎです
または広大な新緑の原に寝転ぶような安らぎです
もしかすると
深海魚のように海底でじっと動かないような安らぎかもしれませんし
まてよ?
ナマケモノが木の上でくた~っと力を抜いているような
安らぎかもしれません
うむ。
回転寿司で自分の好きなネタが回ってくるような
自転車を引っ張って雨の中を歩くような
長靴で浅い水たまりをひとつずつ踏み歩くような
雲の上で雲の中に埋もれてしまうような
三日月の幅があまりに狭いことに感嘆するような
ブラインドの隙間からこぼれ入る朝日のような
とにかくそんな安らぎです
光の粒が見えるのです
それがなによりの証拠です