095 安堵

暗闇の中を歩いていたら
ぽんぽんと肩をたたかれて
ものすごく怖くてギョッとした
しかも振り向いたら誰もいなくて
さらに怖くてギョッとした

その一瞬に自分のいる場所がわからなくなった
暗闇の中、どこを目指せばいいのかわからなくなった
暗闇の中に立ち尽くすと
音も無く
空気の流れも無く
自分が孤独であるという事実が周りから押し寄せてくる

とにかく眠る場所を探さないと
とにかく夜が明けることを祈らないと
心は怖さで縮こまって
何も考えられなくなる

さっきぽんぽんと肩をたたいてきた『物』が
もういちどぽんぽんとたたいてきて
こんどは首をどんどん絞めてきた
姿はわからないし
苦しくて手で周りを探っても何もないのだ
どんどんその『物』の絞める力は強くなり
苦しくて苦しくてどうしようもなくなる
目が飛び出す
なんとも知れない『物』に命を絶たれるのだな
それがわかった瞬間
もうどうしようもないのだという安堵ですべての力は抜け
どこともわからない場所にくずれ落ちた

夜明けを迎えることはなく暗闇が自分の居場所となるだろう
亡骸を見つけてもらえなければ

094 聖域

あなたは守られている
ポットの中に守られている冷たい水のように
あなたは守られている間冷たい水でいられる

守られている空間に下りてみてください
あなたはスーパーカミオカンデみたいな光の中にいて
入り口は上だけだから
外気との接触は少なく
つまりそれが守られているという意味

暑い暑い外気の中を数時間歩き
日陰に座ってポットのふたを開けて冷たい水を口にする
あのオアシス感
それを与えられるパワーがあるというのは
守られていたから

守られている間は気が付かない
時間が経つとあなたは外気と同じくらいの温度になっている
それは仕方のないこと
完全に外界と遮断して生きるなんてできないから
また新たなあなたがポットに注がれる
そのために私は冷たい麦茶を作っています

093 ミーハー

昨今話題になりました不倫についてです
そんなこと人がどうこう言えることではなく
その不倫をした方々がそれぞれの分岐点をどちらに歩まれましょうとも
わたくし本人にはまったく関係のないことでございます。

なのにその顛末を追ってしまいます
なぜなのでしょうか
顛末と申しましても
当事者ではないわけですから
細かいことはわからず
話題になっていることのどこまでが本当に起こったことなのか
それすらまったく追跡することもできず
与えられるがままに
その情報を読み
それを鵜呑みにし
時には疑い
暇な時間を埋めるためか？
また話題の種を探します

そうやって時間は過ぎていき
息はしており
寝てはいて
でも素通りはしないのですよね
頭の中の雑な部分を満たす？
そんなことのためにこの作業を行っております

092 ツアコン

用意はできましたでしょうか
心の準備は整いましたでしょうか
そろそろ出発致します

わたくしのあとを着いて来てください
要所要所で全員そろっているか確認を致します
が
もし着いて行けないと感じた時には
すぐにお声かけください

ずっとわたくしに従う必要はありません
リタイアしたいその時その場所があなたの終点となります
そこで次の出発をお待ちください
引き返してもかまいません

とにかくそれぞれ前に進みましょう

091 埋もれる夢

僕の目の高さからは
人の足しか見えない
それは林のように僕の目の前を鉄格子のようにしている

人が歩き出すと
いったいどこに焦点を合わせたらいいものやら
もう目まぐるしすぎて
眩暈がしてくる

僕は踏んづけられそうだ
それでも誰も気が付かず
僕は石畳の一部にプリントされちゃう

そうなると僕はもう空を仰ぐしかない
僕の目の高さは海抜１メートル
難なく海の水に埋もれる

そうなると僕の視界はもう水、水、水だ
それが空なのか水なのかわからないまま
ずっと石畳の一部として
存在するでもなく
ただそこにあるという
そんなことに憧れを抱く

090 ティータイム

ちょうど今休んでいたところ
一緒にお茶を飲みませんか？
ティーポットに入ったお茶はまだ飲み頃の温かさだよ

唐草模様の陶器にはお菓子が入っている
ふたを開けてみて
思ったものと同じお菓子が入っていた？

ココナッツの味がしんみりと広がるフィナンシェ
チョコレートとバニラが市松模様になっているサクサクのアイスボックス
口が甘くなったら柿ピー食べてみて

そうやってただ話すでもなく
同じ時間に息をしているだけで
落ち着く感じ
それを目指しています

089 見えているもの

今見えるその風景を
いつまでも心に残しておくようにと
じっと
じっと
じっと見つめる

時が止まってしまったかのように
じっと
じっと
じっと息をひそめる

心に残っているものとはいったい何なのか？
それはある映像として思い出せても
それを再現できないし
人に伝えようとした場合
そのまま伝えられるわけがない

それでも残しておきたいという
その気持ちだけがある
残せないのに

088 煙に巻く

返事に困ったら
煙に巻こう
それをばれないようにするにはコツが必要だ
まず注意を逸らす
いきなり両手を広げるとか
話に関係ない動作で
相手の視界ではとらえきれない範囲に物を動かす
これはなかなか使えるのではないかな

実際に煙を焚くことなんかできないから
それに代わる方法を見つけるのだ
マジックを行う準備ができていない時に
急にマジックを始めるような感じかな

相手の中でその話が重要だった場合
何度も話は戻され
結局煙には巻けないかもしれない
煙に巻くという行為が不誠実と思われて
それで相手との関係が崩壊するかもしれない
それに
これを試すことによｔって
自分と相手との力関係やらが露呈するかもだな
本当に煙の中にドロンと消えてしまえるのならいいけど

まあ試してみて

087 ジバコイル考

ぶ～ん
ぶ～ん

頭に詰まっていることを
言葉にしようとすると
すごくいいよ

身体が宙に浮くくらいすばらしいこと
誰かに通じなくても
何かに記しておけば
自分でなら確認できて
自分に通じればそれでいいよ

なんとか人と通じる言葉もあれば
もっといいよ
そんなにたくさんの人じゃなくても
なんとかつながっている人と
そのままつながっていられるのなら
それは宝

だから大事にするね

086 続TCAMY帝国

続TCAMY帝国

敵とは思っていない
だってきゃむ軍団はすごくフレンドリーで優しかったから
敵なんて発想は生まれなかった

だけどそれだからいろいろなことに気がつけなかった
まず
無視力がはんぱない
っきゃみぃ帝国は閉じた帝国であり
わたしはYとつながっていたためにかろうじて右足が入っていただけだった
これに何十年も気が付かなかったんです

っきゃみぃ帝国は鋼鉄の精神で守られている
そこに私が入る余地はなく
しかも帝国内には新たに守られる命も増えているので
帝国外のことなんかどうでもいいわけ
誰だってそうだよね

排除されてみて改めて気づいても遅いんだよ
というか、っきゃみぃ帝国民には『排除した』という認識もないと思われる
てなわけで
わたしはとにかくっきゃみぃ帝国外で生きているよ
戻ろうかと思った時期もあったけど
それは無いなとやっとわかった

っきゃみい帝国外での物語をつづろう
でないと頭が死んでしまう

しかも外にも幸せは溢れていて
惜しみなく溢れ続けている
それをくみ上げ
浴びて
幸せな毎日を生きた方がいい
残るものは感謝しかない