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カンムリヅル [ショートショート]

アフリカ
乾ききった季節が過ぎ、
潤いあふれる季節に生きる物は移動する。
そしてまた乾きの季節に向かう一瞬、
太陽の光の揺らめきの中に蜃気楼のように現れる宮殿があった。
彼女はその宮殿の女王だった。

土の中に隠れていた盗賊たちはその一瞬を待っていた。
そしてその宮殿が姿を消さないうちに
大群で押し寄せ、
大ナタを振るい
財宝と一緒に女王はさらわれた。

女王は引き裂かれ
板切れに打ち付けられ
炎天下に置き去りにされて干からびた。

また水が涸れる季節
陽の力が増し
土は砂へと風化し
女王の物語は忘れ去られた。

でも今でも潤いの季節は廻って来て
水のある風景に王女の姿だけを見ることができる。
物語は消え去ったけれど
彼女はすっくと立ち胸を張って黄金の冠を戴き
何も起こらなかったかのように、優雅にステップを踏んでいる。


カンムリヅル.jpg



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