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ゴミ [ショートショート]

昔、あたりはゴミだった
駅まではゴミの山だった
あの時はゴミとは思っていなかったのだけど
どう考えてもゴミだったわけなのだ

どうも自分もゴミだったらしい
自分では認識していなかったのだけど
それじゃなくちゃ
ぽいと丸められなかっただろうし
ぽいと捨てられなかっただろう

じゃあどうする?
ゴミにはゴミのいる場所があるのだと
昔は気がつかなかったのだけれど
どうやらそのゴミ捨て場にいることが最近わかったのだ

ゴミゴミゴミゴミゴミゴミ
これを歌にしえしまえ
ゴミゴミゴミゴミゴミゴミ
ついでに踊り出してしまえ

それを人はやけくそというのかも知れないけど
その中に埋もれてさえいれば
周りは見えないのだし
もしかしたら、
ゴミなりの人生もなかなか味があるのかもしれないし

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狂気 [ショートショート]


音がなく
はりつめた風景

風がなく
立ち尽くす荒野

なにもなく
広がる空虚

先はなく
戻る場所もない

夢もなく
希望もない

心は深く沈みマイナスになっているから
頭の上に渦巻く世界から
雨のように言葉が降ってくる

足下に溜まる前に
自分の五感にひっかかってしまうもの

意識のスイッチを切っても
どうしてもひっかかってしまうもの

いいよ
ほかの言葉は
ただ身体の中をすり抜け落ちて行けば
そのうちのいくつかは
それぞれの場所に落ち着く

もう少しよく気が狂わなければ
とうていやっていけない


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あしあと [ショートショート]

静かに時が積もる海岸線を
はだしで…
波に触れないように歩いて行く

ふっと止まって振り返る
自分の重さで刻印された足の形が
波にかくれ

波が引くと
少し薄れ

訪れた波の回数分の薄さで
歩いてきた跡が点々と見える

どこまで見えるか
どこまで消えているのか
遠くにある岩場までははっきりは見通せない

空で何かが鳴く
そこに視線を移している間に
波はとうとう私の足に届いてしまった

ぐるぐると自分の脳天を中心に世界は回っていた
その渦巻きは潮に届き
気は遠のき
私は海に飲まれる
地軸に吸い込まれるように
身体を水の壁に委ねよう
何も跡形も残らないように

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クッキー [ショートショート]

クッキーの
ひとつひとつを包むセロファン袋の
白い印刷の文字
それはバニラの味で
茶色い文字がショコラ
ピンクの文字がストロベリー

クッキーの
ひとつひとつを包むセロファン袋は
ただの袋だから
何も入っていなくても文字は消えない

クッキーの
ひとつひとつを味わって
今、中身のなくなった袋を見ている
透明の袋の中に入っていたもの
それがなくなると袋の向こうが見えるね

クッキーの
ひとつひとつを包むセロファン袋が
大きい一つの袋にまとまっていて
それはスーパーの決まった場所にある

そのクッキーを買うためにその場所に行ける
スーパーの迷路をなんとなく覚えている
好きなもの
食べたいもの
必要なもの
ただ通って確かめたいもの

クッキーの
ひとつひとつを包むセロファン袋は
この棚の上にいったいいくつあるのか
ほかのクッキーも包んでいるから
それは膨大な数だ

その膨大な数の中から
今手の中にあるひとつの袋
目をつぶって手探りで引っ張ってきた

さあ袋を空けます。
香りで何かわかりますかな?

クッキーの
ひとつひとつを包むセロファン袋から
こぼれ出たひとつ
口の中でほろほろと溶ける
その時間を味わう

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手当 [ショートショート]

手のひらで肩を包む
肩の暖かさを感じる

身構えていた痛みたちは
結束を緩め
一枚ずつ降伏しはがされてゆく

それはどこにいったのだろう
手のひらに吸い込まれたのだろうか
そもそもなぜ痛みは起こっていたのか

日々の暮らしの中で奏でられた不興な音が
重なり
知らず知らず膜を作り
あるいは澱がたまり
身体には相いれない何か
入り込んだ何か
行き場のなかった何か
恍惚としている中で消えていった何か


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現実 [ショートショート]

屈辱のシャワーを浴びよう
何にも書けない山盛りの恥

絶望の浴槽に浸かろう
誰にも言えない辛苦の湯

失敗したことを繰り返し思い出して
茨の胴衣を編む

どんなにもがいても届かない輝く世界に背を向けて
冷徹な風雪に打たれよう

それでも芯は死なず
それでも何かを求めている

強欲な自分を晒そう
灼熱地獄の砂漠のような
ひからびた現実を受け入れよう

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たまねぎ(2) [ショートショート]

たまねぎどうしの話し合いで
たまねぎは主張しましたが
結局結論は出ませんでした

玉ねぎは肩を抱き合い
もう、話が合わなくてもいいことにしました

じゃあなにを合わせる?
まあ味を調えて
コンソメスープでも合わせるかな
そこにパンを浮かべるかな
あつあつにするかな

たまねぎは結局、静かに柔らかくなりました


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あきらめ [ショートショート]

あきらめるということは
すてき
きらきらきらめきゆらめく先にあること

その先を過ぎると急に世界が開けて
ずっと遠くまで見渡せるような気になる

でも視力の限界があって
けっきょく細部までは見えるわけではないよ

いいんだ
そこまで見えなくても
あきらめたんだから
そこできらきらきらゆらめく光を享受しよう

ラッツォが夢見たカリフォルニア
オラフが夢見た夏
自分に見えず行けない世界があるから
焦がれる思いが生まれ
きらめきはゆらめき形を成さないから
描こうという気持ちが生まれる

ただあきらめて
そこに立っていればいいってことだね

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昼寝 [ショートショート]

風の通り道で横になっていると
もうたまらなく眠くなってきて
身体は床と一体化
どうにも動きがとれなくなる

いろいろな話声が聞こえてくる
その声の主は
羽虫だったり
ほこりだったり
彷徨える魂だったりするのだけれど
私に話しかけているのか?
羽虫同士でおしゃべりしているのか?
ほこりが魂に声かけているのか?
それぞれが勝手に話しているのか?
話はかみあっていないし
眠すぎて頭が動いていないから
言葉を追いかけられない

意味をなさない話声が
わんわんんとくすぐったい

そんな騒がしい中でまどろんでいる心地よさ
何かがそばにいて世界が埋まっている心地よさ
あまりにもたわいなく
何も心に引っかからない
幻のような日常がさらに幻となる時間に浸る

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 [ショートショート]

言葉を省き
心を省き
行動を省き
軽くなっていく

夕暮れ時に
その軽さを忘れていて
台風の始まりの風に
足をすくわれる

脳天はアスファルトをたたき
その拍子に空中に蹴上げられた足が
通りがかりの人を叩き
その人は大ホームランとなって宇宙に去る

失敗したな
あまり軽くなりすぎないように
こんどは
言葉を加え
心を加え
行動を加えて行こう

ためすぎず徐々に省きつつ


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