12、赤土の街、①、パン職人ラパパ [人形カタログ]
赤土の街には、パンの焼けるいい香りがただよっている
パン職人のラパパはいつもふてくされているけど
焼けるパンは極上だよ
「つまんねえ」というのが口癖で
ニコリともしないのだけれど
ラパパのパンはいつもおいしい
お休みの日に川べりを散歩しているラパパをときどき見かけることがある
のんびり、ぼんやり歩いていても
頭の中ではパン作りの順番を繰り返しているそうで、
「ちっとも頭を離れやしねえ」
と苦笑いしていたよ
すれ違いぎわに、焼き立てのパンの香りを感じて思わずふりかえった
ふっくらやわらかいパンも好きだけど
ぎっしり木の実が詰まったかためもパンの方がもっと好きだな
夕方を過ぎてラパパの店に寄ると
ふっくらやわらかいパンは売り切れているけど
かためのパンが残っていることがあるよ
「これは同じ値段だけど、材料多く使っているし、力を込めているんだから得だぜ」
とラパパが言ったっけ
たくさんの人の好みとはずれたところに自分の好みがあると
得だな
街の道しるべのようなラパパの店をめざして歩くとき
この街で生活できてよかったな、と思うよ
これはシリーズです。赤土の街の住人が3人出てきます。
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