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11、ワインの守り人 うっさむ [人形カタログ]

ワインの守り人・うっさむ.jpg
うっさむはワインの守り人
身体の中に1本のワインを蓄えられる

うっさむの住むワインセラーにはありとあらゆるワインがそろっている
うっさむにはワインの変化がわかるのだ

ワインセラーは大きな洞に作られていて
中は迷路のようになっている
その洞の中に寝かされると、ワインには特別の風味が増していく

そこに訪れてごらんよ
めまいがするほど芳醇な香りが満ちていて
ワインを口にしなくてもうっとりと酔ったようになってしまう

どの1本を取ってもその1本にはそのワインの歴史があるのだ
どの1本を取ってもそのワインは最初はぶどうだったのだ
ぶどうを育てている人から、ぶどうを作っている人に役目へ引き継がれ
樽に入り、瓶に入り、うっさむの元に送られて来るのだ
そうやって人の魂が入り込んだワインを軽々しく扱うことなんかできやしない

うっさむのワインセラーはワインの神殿だ
身体の中に入ったワインはその人の血の素になる
うっさむは邪念をはらい、ただ自然の壮大な力を感じながら
じっとじっとワインを見守っているのだ

うっさむの手を離れたワインは
それぞれの特別な場所へと運ばれる
ある時はそこは祝宴で、ひとびとが酔いしれる手伝いをし
ある時はそこは偉大な人が亡くなった悲しみの場所で
ひとびとは亡くなった人を悼み、
その家族の悲しみを和らげ
これから生き続ける自分たちを励まし
沈んだ気持ちは静かにまた浮き立つように
希望を持ち続けられるように
その場その場に望まれる気分を演出し高め
人々は満足する

うっさむは今日もワインを見守り続けている
毎日、毎日、ワインを手放す時は毎日悲しい
でもどうやら自分のワインは人を喜ばせ楽しませるらしい
それがどういうものかはわからないけれど
ワインに合う料理はわかるから、それを作りさらにワインの存在を高め
ただただワインのそばにいて見守ることで時間をつないでいる


このお話はこれで終わりです


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